魚沼市田中 仲丸晋也さん(49)

 清々しい夏の朝。パチンと枝を切る音が、静かな畑に響きます。葉っぱに隠れるナスを丁寧に収穫するのは、魚沼市で農業を営む仲丸晋也さん。

7月から10月までは魚沼市特産の『深雪なす』を、12月から4月頃までは促成山菜の『うるい』を出荷しています。河原で考え事をするのが好きな少年だったという仲丸さんは、高校卒業後に魚沼を離れ、飲食業や旅行添乗員など、多種多様な業種を経験したそうです。2014年に地元に戻った仲丸さんは以前から植物や農業に興味をもっていたこともあり、市内の農業法人に就職。その後2019年に独立し現在に至ります。

「作った野菜は自分の名前で責任を持って出荷したいと考えていた。飲食業にも携わっていたから消費者のことまで想像できる。お客さんにガッカリされるのが一番嫌だ」と話し、真剣な眼差しで出荷作業に当たります。

 独立時どんな作物を作ろうかと考えていたところ、先輩農家から『深雪なす』の栽培を勧められ、その時に食べたナスの美味しさに驚き、栽培を決めたそうです。

現在栽培5年目。気づいたらベテラン農家と若手農家を繋ぐ役割を担っていた仲丸さん。ベテラン生産者の知識と経験を吸い上げ、若手生産者と共有しているそうです。

仲丸さんは「若者が、やりたい!と思う仕事をして生きていける社会って、いいよね。楽しくないと本当の『本気』になれない。『楽しい』で選ぶ人生もアリだと思う」と笑います。

 「お金をいただくということは人を喜ばせるということ。これはどんな仕事にも通じるよね」経験を糧に語る仲丸さんは、その湧き上がる好奇心で真っすぐ農業と向き合っています。

2024年9月号掲載